等身大のラブソング



赤いワインをグラスに注ぎながら、思わず笑みが漏れる。
「何がおかしいんだよ」
それをいぶかしげに見つめる宍戸。
テーブルの上にはいつもより少しだけ豪華な食事と、ホールのケーキ。
「いえ、違うんですよ。何かうれしくて」
「俺の誕生日なのにか?」
そりゃあ、と2つのグラスにワインを注ぎ終わるとワインボトルをテーブルに置き、1つを宍戸に手渡した。
「自分たちで用意した食事にケーキ、それにワインで乾杯なんて、こんな風に誕生日を祝えるくらい大人になったんだなーって思って」
「半分くらい出来合いじゃねーか」
「まぁまぁ」
「確かに学生のころは金なかったもんなー」
宍戸は手に持ったワインを光に透かしてしみじみと昔を振り返った。
「跡部さんちで合同パーティみたいなものやるときだけ豪華でしたけどね」
「でもあいつの仕切りはおおげさで、とても子供のやることじゃなかったよなぁ」
10月前後に当時のレギュラーたちの誕生日が重なっていたため、合同で誕生日を祝おうということになったことがあった。
必然的に跡部の家で催されることになったのだが、それを聞いた跡部の家の人間たちが張り切りすぎてしまい、どこの企業のパーティか、というような規模にまでなってしまったといういきさつがある。
「まぁあれはあれで面白かったけど…」
一流シェフや板前が目の前で調理する料理に、バイオリンなどの演奏…とにかく豪華だった。
「俺はこれくらいが合ってるしな」
宍戸が鳳に笑いかけると鳳は顔を手で覆って下を向いてしまった。
「…もー…これ以上俺を喜ばせないでくださいよ」
「そんなことしてねーし」
あ、とテーブルに置いていた携帯が震えた。
「岳人からだ。おめでとーだとよ」
カラフルな絵文字を使ったメールの画面を鳳に見せる。
「…宍戸さん、早く始めちゃいましょ。どんどん邪魔が入る」
「…邪魔って。ひでーなお前」
宍戸は携帯を畳みながら笑って、もう一度ワイングラスを持った。
「宍戸さん、誕生日おめでとうございます」
「おう。ありがとよ」
「宍戸さんが生まれてきてくれて、本当によかった。うれしい」
「…バカだな、お前」
カツン、とグラスの合わさる音が部屋に響いた。

*  *  *

「ん…?」
少しだけかすれた声でうなりながら、宍戸は枕元の携帯を開いた。
「…今度はジローかよ…つか時間ギリギリじゃねーか。しょうがねーなあいつ」
暗がりで携帯の画面を光らせながら笑っていると、隣に寝ていた鳳が身体を抱きこんできた。
「もーやっぱり先輩たち邪魔する…」
宍戸の肩に顔を埋めて拗ねる鳳の頭をかき混ぜて宍戸は笑いながら耳元にキスをした。
「せっかくだからお祝いの言葉はもらっとかねーとな」
「絶対わかってやってますよこれ」
「…お前と俺が今こんなことやってるなんて誰も考えてねーだろ」
「先輩たちのメッセージもいいけど、今は俺だけ見て」
腕に抱きこまれながら、また枕元に閉じた携帯を投げた。


「最初からお前しか見てねーだろ?」

end