onでもoffでも



「これもらっちゃいました」
帰ってきてテーブルに置いた紙袋から鳳ががさがさと何かを出している。
クリスマスだから、といつもよりかなり早めに帰ってきたのでてっきり酒か何かかと思ったら。
「キャンドル…?」
「そう、事務所の女の子がいっぱい買ってたのでいくつかもらってきました」
「…どうすんだよこれ」
「え?点けるんでしょ」
「そうじゃなくて」
男二人で住んでいる家にこれはないだろう。しかもかなり可愛らしい色合いのキャンドルだ。
「その子のねー彼氏がすごいんですよ。その子がね、誕生日とクリスマスが近いから先日祝ったそうなんですけど、部屋中にこういうキャンドルおいて、彼女をびっくりさせたらしいですよ」
「…へぇ…あぶねぇな」
「そうなんですよ。俺もそういうのやってみたいんですけど、倒して火事とかになったら洒落にならないでしょ。だからちょっとだけもらってきました」
一応自分の不器用さは自覚があるのか。
「これなんかはアロマキャンドルで香りがあるらしいですよ」
そのうちの1つを手にとって宍戸に見せた。
「へぇ、何の匂い?」
「…Hな気分になる香り」
「……」
「ていうのは冗談で、宍戸さんの好きなミント系ですよ」
「何今の誰も得しないような冗談…」
宍戸のつっこみも気にせず、うきうきとテーブルに並べていく。
あとで点けましょうね、と耳元に囁くと着替えに奥の部屋に歩いていった。
「…冗談じゃねぇじゃん…」
宍戸は軽くため息をついたが、クリスマスイブは例え平日でも出来る限り早く帰ってくるから、自分にも早く帰ってこいと1ヶ月以上前から散々言われていた。そんなにクリスマスやりたきゃ前日の祝日でもあとの週末でもゆっくりやればいいのに、という宍戸に「イブは恋人同士が愛を語らう日じゃないですか!」と激しく反論していた。
つか、いつの間に日本てそういう日になったんだ…。
とはいえ毎年毎回イベントごとを鳳と過ごすうちに宍戸自身も慣れてしまった部分もあるわけだが。
まぁあいつが楽しそうだからいいか。
宍戸は奥から聞こえる鼻歌を無視して、食事の用意を続けた。



風呂上りで髪を拭きながら寝室に入った宍戸の目に飛び込んできたのは…。
「あ。宍戸さん。どうですか」
寝室のサイドボードに3つほど先ほどのキャンドルが灯されていた。
「どうって…」
ベッドに座ってあたりを見回した。
「電気消すのかよ」
「そりゃそうですよ。今夜はキャンドルだけです。いい雰囲気じゃないですか?」
「うーん…」
そのままベッドに寝転ぶと天井や壁に揺れる炎の光を見つめた。
「ま、いいんじゃね?」
「何かムードないなぁ…」
そのまま寝転んだ宍戸の上から覆いかぶさって宍戸の顔をのぞき込んだ。
「俺にムードとか期待すんなって何度も言ってるだろ…つかさぁ…」
そのまま鳳の腕を引き寄せた。
倒れ込んで宍戸の体の上に体重をかけないように、顔の横に手をついて鳳は顔を寄せた。
「なに?」
ちゅっと軽く唇をつけるとそのままの状態で顔を見つめた。
「Hすんのにこういう効果っていらなくね?どうせやってたら気にならなくなるんだしよ」
宍戸さん、それは正論だけど言ったらおしまいです。
と喉まででかかったが、飲み込んだ。
「気にならないくらい熱中してくれるんですね」
笑いながら宍戸の首筋に顔を埋めた。
「んなの…」
当たり前だろ、の声はキャンドルの光に飲み込まれた。
それにしても。
「…宍戸さん」
なんだか。
「宍戸さん…?」
すっかり集中していた愛撫を止めて、顔を見上げた。
「ん…わり」
「ええぇえええ!?寝てたんですか?」
「だってよ…間接照明みたいで見てるとすげー眠くなってくる…」
瞬きを数回激しくて、目をぎゅっとつぶった。
「しかも何か暗くなってきてね?」
「あ…もうすぐ消えちゃう」
「だせーな…消えたら真っ暗だろ。消える前に終わらせろよ。…"ムード"があるうちに」
「…頑張ります!!」

頑張りすぎて、平日だということを忘れてしまったのはまた別の話。

end